何だよその「こだわり」はよォオ!『アタックシンドローム類』

読書

最近読んだ漫画の個人的お気に入りは

『アタックシンドローム類』ですね。

こういう漫画は『殺し屋1』を最後に、もう出てこないと思っていました。

自分の「嗜好」と「コンプレックス」を武器にして戦う主人公です。

このふたつ、コインの表裏ですよね。

【あらすじ】悲しきモンスター…類我次郎

主人公の名は類我次郎。

音や物の配置に対して異常な「こだわり」を持っています。

普段は栃木県足利市のショッピングモールで夜間警備員をしています。一方でゾンビマスクで顔を隠して、市内の悪党に制裁を加えています。ヒーローというか、クライムファイターみたいですね。バットマンみたいな。

お話が進むにつれて、徐々に我次郎が「そう」なってしまった背景…家族のことが語られます。どうやら我次郎のパパは相当な極悪人だったようです。ママは昔、パパに酷い目に遭わされて大怪我を負った。そこでママは我次郎に対して、パパへの復讐を誓わせます。
そんな我次郎の正義も、どこか歪んでいます。

悪いパパが善良なママを傷つけた。
悪いやつは全てパパの手下だ。
悪いやつは全て倒す。そして最後にパパも倒す。

そういう善悪の図式というか、シナリオに頼って生きることで、我次郎はかろうじて精神のバランスを保っているのです。

でも、当然ながら「シナリオ」通りに物事は進みません。例えばママは、我次郎のなかではいつだって正しく、美しい存在。我次郎のことを世界でいちばん愛している。だから我次郎にとって、ママの言葉は絶対です。

でも、残念ながら、現実のママは違います。パパへの憎悪と復讐心に満ちています。我次郎に対する愛情も希薄で、むしろ典型的な毒親です。

それでも、疑いをさし挟むことはできません。理想と現実にズレが生じた時、我次郎は猛烈なストレスに襲われます。ストレスはやり場のない暴力衝動となって発露します。衝動を抑えるために、我次郎はレコーダーの音声を再生します。レコーダーには悪党たちの悲鳴が録音されています。「悪は滅びる」という秩序を確認することで、ようやく精神を安定できるのです。

【予想】これからストーリーはどうなる?

やっぱり漫画はキャラが命ですね。

ストーリーで起承転結つけるよりも、異様なキャラが出てくることで「何かヤバいことが起こる」そう思わせる方が、読者はワクワクします。予測不能なスリルが漫画…特に劇画系には欠かせません。この漫画も、我次郎のキャラが物語をグイグイ引っ張っていくでしょう。

物語を引っ張るキャラといえばもう1人。ガールズバンド「明洞ジャパン」のソユンがいます。我次郎に恋をしたようです。イヤ、でもその恋は上手くいかないような気もする。二人とも「こだわり」が強すぎるし暴走ぎみだから、その分、理想との違いに幻滅する時があるんじゃないか。そういう苦い場面はあるかも。なんせ(ほぼ)初恋ですから。

漫画自体の結末についても、あんまりハッピーエンドは期待できないと私は思うんですが…どうでしょう。仮に我次郎が当初の目標通り、パパを倒したとしても、ハッピーエンドにはならないんです。なぜならその目標は、ママに強制されたもので、我次郎が自分で選んだものではないから。

いつか、我次郎の理想というか「こうあるべき」という世界がぶっ壊れる時が来るはずです。それ自体が悲劇みたいなものですが。それまでルール通りに生きてきた人間が自己認識に目覚めるっていうのは、強力な死亡フラグなんですよ。なぜかというと、話の前提そのものを壊しかねないから。我次郎が戦うことをやめ、パパへの復讐をやめ、ママの言う通りに生きることをやめ、自分の生きたいように生きる。それはこの物語が終わる時、主人公としての命が尽きる時です。

でも、この主人公には、できれば幸せになって欲しい。

私も含めて、みんな生きづらさを抱えているから。

生きづらさを武器に戦う、みんなのヒーローだから。

【最後に】ギャグについて

主人公・我次郎の視点で読んでいくと、どうしても息苦しく、しんどくなりがちですが、適度にゆるいギャグテイストが入っているのもイイですね。作者は足利市をホームタウンとしてヤンキー漫画やギャグ漫画を描いています。私はそっちの方は試し読みしたことがあるだけですが。今回の作品にもギャグ漫画の雰囲気が生きています。

この作品にシリアスなバトルを求めている読者にとっては、馬喰横山がやられた後の展開とか、何だかはぐらかされたような変な感じだと思うんです。でも、この漫画はギャグの要素が、とっても大事なんだっていうことを伝えたいです。

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